真夜中のプロジェクト

国立研究開発法人ジプシーのぼんやりした日記

逝ってしまった君へ(読書感想文)

あさのますみ

 

自死してしまった学生時代の恋人の突然の訃報を受けてから葬儀に参加して遺品整理するあたりまでの覚書を彼に伝える手紙形式として書かれていて読みやすい文章だった。

 

作者本人もSNSで過去の両親の毒親ぶりなどを披露しているけど、この本でも触れられていて良くまぁ生き抜いてこられたなと思ってしまった。

ディズニーランドにも連れて行ってもらえない貧乏家で家を出たいと思って高校時代からバイトを始めたのに親に金をせびられてバイト代は全額渡していたとか、大学の奨学金も勝手に使われていたとかそんな酷すぎる両親から、無理にでも離れたほうが良いと言ってくれて引っ越し代等を貸してくれたのがその逝ってしまった君なので命の恩人というか人生の恩人でもあるんだよな、その彼が突然鬱で死んでしまうとその衝撃は想像すると相当辛い。

 

私もゲーム会社に入った当初の同僚プログラマー氏が退職して飛び降りていた事実を知らされてご両親の元に挨拶に行ったりしたときの辛さは多少判る。

 

会社から部署異動を命じられてそれを苦にして退職してしまった私の同僚氏は

送別会や退職後でも忘年会に呼んで励ましたりしたのだけど、忘年会のときですでに退職して半年ほど経過していたのに職探しをしていないとかハローワークに通っていないというので失業給付金も受け取っていない状況だったので少し心配したけど、正月には実家に帰るといっていたのでまぁ実家に帰ったら退職したことを両親に話してそのまま実家に戻るんだろうなと思っていたらそんな事なくて、すぐ東京に戻ってきていてボーナスが少なくて通勤定期代が足りないのでというメチャクチャな理由で両親に金の無心を一度だけしてそれを食いつぶしたあとビルの屋上から飛んでしまった。

 

事の顛末としてはそんなところになるんだけど、実際に私が知らされた順番としては

忘年会も新年会も終わった2月の終わり頃、人事課の人が私のところにやってきて同期の彼と連絡をとっているか?と唐突に聞いてきたので、半年以上前に退職してるしまぁ忘年会には呼びましたけど、どうしたんですか?と聞いてみたら、彼は退職したことを両親に話しておらず上京してきた父親がアパートを訪ねてみたところ郵便受けが一杯で返事がないということで会社に連絡があったということだった。

 

流石に心配になったのでその翌日の土曜日、彼のアパートに行ってみたらたしかに返事は無いが郵便受けはキレイになっていた(彼の父が掃除をしていったのは後から教えられた)だけでその日は成果なしですごすごと帰宅。

 

帰宅したら家の留守電にメッセージとFAX複合機だったのでFAX宛にものすごい長い文章で彼の両親からのメッセージが届いていたので、すぐさまリターン電話をかけてみるとまだ見つかっていないので心配しているということと、いつ頃仕事を辞めたのか?とか交通費も貰えないほどひどい会社なのか?(彼が金の無心するときに嘘ついたため)等、色々と彼の父と母に入れ替わりながら心配している様子を聞き、私も心配しているということを伝えてその日は電話を切った。

 

週が開けて職場に行って仕事をしていると、人事課の人が寄ってきて話があると言われて応接室に連れて行かれてそこでとうとう彼がビルから飛び降りたという話を聞かされました。

流石にその日は仕事にならず、いつも一緒に昼ごはんを外に食べに行っている先輩氏に心配されたので会社の外の定食屋で先輩に打ち明けてしまいました。

その後はその先輩も含めて午後はどうしようということになり定時で会社を出て縁のある人達を集めて秋葉原の大酋長でその話をしました。

 

それからしばらくして線香をあげに行こうということで先輩後輩連れ立って山梨の彼の実家へ行くことになって、そこで彼の両親から息子のことを最後まで気にかけてくださりありがとうございましたと土下座をされてしまったのは流石に堪えた。

先に逝ってしまうと残されたものはずっと辛いことが続くんだよな。

この本でも遺品整理なんかは両親にやらせてはいけない、努めて明るく振る舞うべきという辺りはすごく共感できた。

風のうわさレベルだけど彼のお姉さんの結婚は破談になったそうだし、同居していたおばあさんも悲しんで翌年亡くなってしまうしと残されたものも辛いというか残されたものが辛い、先に死んでいく人はズルいなというのも思うようになったので私はとにかくもがいてやろうと決心している。

 

この本の彼もこの会社でしか働けないという悩みを抱えていたようだけど、私の逝ってしまった彼も部署異動の要請を受け入れられないなら退職して同じ仕事をしている同業他社に転職すれば良いことなのにそれをしなかったのが今でも理解できない。