真夜中のプロジェクト

国立研究開発法人ジプシーのぼんやりした日記

テトリスエフェクト(読書感想文)

ダン・アッカーマン/小林啓倫

 

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平成の終わりに歴史的ゲームの権利関係についてジャーナリストが書いた本を読んでみた。

 

当時はアーケードゲームマニアで更にセガ人だったので発売直前に中止になってしまったMD版テトリスについて任天堂を正直恨んでいた。

当時高校生だった私はネットがまだ整備されていない時代にゲーム専門誌や一般の新聞報道などから情報を必死で集めていたのでアタリ・テンゲンとのテトリスに関するやり取りなどは表向きは知っていたけど細かい部分までは知らなかったので、とても興味深かった。

 

ファミコンテトリスを発売したのはBPSだったが、そのBPSは本邦初のコンピューターRPGであるブラックオニキスの開発会社でありその社長ヘンクロジャースがモスクワに飛んで任天堂の代わりに複雑化したライセンスを纏める役を担ったこととか、テトリスの複雑な権利関係について成り立ちの詳細が記されていて資料としても価値が高い内容だった。

 

最初はPC版についての権利だけがミラーソフトにあり、拡大解釈をして家庭用のライセンスをアタリゲームズにサブライセンスとして売り、アタリゲームズの家庭用販売会社テンゲンが日本でのアーケード版のライセンスをセガに更に売却していたりとかなり複雑。

 

ゲームボーイのキラーソフトとするべくモバイル用のライセンスを得ようとしたことが結果として複雑な権利関係が明るみに出て整理されたように思えた。

PC版の権利というのも曖昧で拡大解釈されていたので、ソ連側も策を講じて任天堂との交渉を進めるうちにPC版とはモニター、ディスクドライブ、キーボード、オペレーティングシステムを備えたものであるという修正文をミラーソフトとの契約書に追加してそれが後の裁判で有効に働いたこととかなかなか手に汗握る展開もあった。

 

本筋以外にもBPSでのブラックオニキス開発秘話であるとか、ニンテンドー・オブ・アメリカのドンキーコング裁判などについても触れられていて当時の歴史的資料として充実した内容の本だった